ようやく今シーズン初のバックッカントリースキー。(スキー自体も3日目)。
谷川岳を登ってきました。
ご一緒させていただくのは、いつものように谷川岳警備隊の新井孝之さん。
とても楽しいけれど、それと同じくらいに危険な山。
8000メートル峰14座の死者を合計しても約600人なのに対して、谷川岳の死者は800人以上。多くの避難者や犠牲者を背負い下山し、谷川岳と共に生きてきた方です。
前日の夜に谷川岳登山指導センターに入って、新井さんや山岳警備隊の方々と食事をしながら賑やかに過ごしました。
そして翌朝。
朝食を済ませ気持ちを入れ替えて支度を。
ここで忘れ物をしたら取りに戻ってこられないし、もしかしたら一生戻ってこられなくなるかもしれない。
ビーコン、スコップ、プローブ、防寒具、行動食、飲み物などひとつずつ確認していきます。
ロープウェーが動き出したので出発。
まずは天神平スキー場へ。
そこからリフトに乗って、降り場から少し歩いてスキー場管理区域外にアプローチします。
スキー場から管理区域外へ出るときは、決してスキーを履いたまま滑って出てはいけません。
そうすると滑った跡が出来てしまって、一般スキーヤーが「こっちもゲレンデなのかな」と勘違いして管理区域外に出てしまう可能性があります。
管理区域外へ出て、スキーを履いていよいよスタート。
最初は少しだけ滑って降ります。
そこからいよいよスキーの裏にシールという登坂用具を装着して登ります。
それにしても快晴!!
天候の変化が激しい谷川岳でこの快晴を当てるなんて持ってる!
気持ちがただただ上がるばかり。
でも、
今シーズン初のバックカントリー。
登坂技術が鈍っていたり、高度に慣れていなかったり。
そしてこの1年は舞台ばかりだったので運動不足だったし(不摂生もあり)すぐにヘトヘト。。。
荷物や履いているブーツやスキーがいつも以上に重く感じて大変でした。
今回予定している行程は、谷川岳の山頂まで登ってさらに奥に進み、芝倉沢を滑るルート。
ロングルートなので時間も不安になりながら一歩一歩前に。
この一歩は数十センチだけれども確実にゴールへ近づいているんだ。
そう言い聞かせながら進みました。
そしてようやく谷川岳山頂に到着!
見事な絶景に疲れも(少し)吹っ飛びました。
そしてこれから進む先を見ている新井さん。
スキーを履いたまま進んでいく予定だった斜面に広く岩肌が出ていて別の登坂用具がないと厳しいかもしれないとのこと。
安全をとって登ったルートを引き返すことにしました。
予定を変更して滑走エリアは「肩の広場」。
山頂付近にある山小屋「肩ノ小屋」からすぐの広い斜面。
ふかふかのパウダーではなく少し重めの新雪だったけれど、誰も滑っていない斜面を独り占め!テンションをあげてドロップイン!
・・・と思ったら最後に片足が雪に取られて転倒。
でもそれも気持ちよく笑顔になっちゃいました。最高!!
次に新井さんがドロップイン。
新井さんはスノーボード。ライディングスタイルがとてもかっこいい。
うまく言葉にできないかもしれないけれど、「山を愛しているんだなぁ」と感じずにはいられない滑りなんです。
やはり自然っていいな。
このような山々に囲まれた場所を「自然」と呼ぶならば、
街は「不自然」なのかもしれない。
街に住む僕たちは、その不自然の中で「自分らしく」と自然に振舞って生きていかなければならない。
それこそ不自然だと思う。
でもそうしなくてはいけない。
だから僕は、時間が空けば自然の中に身を委ね、自然を感じ、自分の「自然」を取り戻す。
そして街に戻ってまた不自然のなかで過ごしていく。
群馬県みなかみ町に小さい部屋を持って10年ちょっと。
これを続けてきて、身体も心も豊かになってきたと感じます。
自然は「嘘」がありません。
そこに斜面があって、水があるから川になる。
木陰で日が当たらないから草が生えにくい。
僕たち人間が疑っても意味のない世界。
だから素直に受け入れるしかない。
その世界が自分になってどう感じるか。
もし日常が窮屈に思えることがあったら、1日ゆっくり自然の中で過ごしてみてはいかがですか?
そして滑ったり歩いたりしながら下山。
登りより体力と心に余裕があるので、絶景をカメラに収めながらのんびりと。

実は別の名前が付いていたのですが、国土地理院が地図作成の際に誤って谷川岳と表記してしまってそれが定着してしまったのです。
この写真に写っている、今は俎嵓(マナイタグラ)という名前の山がもともと谷川岳でした。
登りはあんなに時間がかかったのに、どうしてこんなに早いの。。。
あっという間の下山でした。
自然のアクティビティに100%安全ということはありません。
そのなかでも可能な限りリスクを減らし、新しい体験と学びを与えてくださる新井さん。
本当にありがとうございました!
スキーヤーっぽく見える新井さん(笑)
この日の道中も他の登山者と話をしていて新井さんが「警備隊です」と言ったら、「もしかして、新井さんですか?」と言われたり、「以前滑落してお世話になりまいした」という方も。
新井さんをはじめ多くの警備隊の方が日々谷川岳を見守っています。